
Philippine
アイランドホッピング、フィリピン

Story 1
道端からの投げキッス
セブ島、フィリピン最古の歴史がある島。
冒険家マゼランが世界一周の途中で、この島にキリスト教の布教に訪れたときに、侵略者を迎え撃とうと立ち上がった王様、ラプラプと戦って志半ばにして亡くなった島。1521年のこと。
そんな歴史がある島だったって知ったのは、日本に帰ってきてから。
会社で働き始めて3年めの夏休み、きれいな海に行きたいなって。
有休取って、飛行機で4時間のフィリピンはセブ行きのチケットを買った。
マニラで乗り換え、黄色がかわいいセブ・パシフィックの飛行機に乗って
着いたとたん、ここはきっと面白い国なんだってくすくす笑えた。
荷物が回るターンテーブル、カーテンの影から何人もの顔が覗く。
職員さん、なにしてるのん。
写真撮って見せてあげた。でもそこ危ないんじゃない?
空港の外に出ても、驚いた。
お出迎えの人の多さに驚いた。ここまで多いのはじめて見たよ。
いったい誰が帰ってきたってゆうの?
バスに乗り込んで、空港から町に向かう途中でも。
窓から外を見ていると、あっちからもこっちからも、
バイバイ!ばいばい!右も左も大忙し。
あ、兄ちゃん今、投げキッスした。なんかポーズしてる人もいるよ。
学校帰りの子どもたちは、飛び上がって大きく手を振ってくれた。
信号待ちなんてした時には、誰の目を見たらいいのか迷うくらい、
たくさんの人が笑いかけてきてくれた。
昔、お姉ちゃんたちと車に乗って渋滞に巻き込まれたときとかに、
「ねぇ、ちょっと後ろの人にバイバイしてみよっか」って。
バイバイしてみて、そうしたら後ろの車の人もバイバイ返してくれて、
たったそれだけのことでもキャッキャと楽しかったときのことを思い出した。
知らない人と笑ってバイバイするだけ、なんでもないことだけど、
なんだかとってもご機嫌なこと。
でも確かに今でも、京都で大型観光バスに乗った外国人の団体を見かけると、
日本まで来てくれてありがとう、どうぞ楽しんでって気分で自然と笑う。
そうしたらほぼ確実に目が合った誰かが片手上げて微笑み返してくれるもの。
国の印象って、人で決まる。
そういう意味でも、セブ島は空港から町への道のりだけで、
ここはきっと明るい島なんだって楽しくなった。

Story 2
Island Hopping


フィリピンは、太平洋に浮かんでいる7107もの島をひとくくりにした国。
全部集めてくっつけて考えると、日本の約8割の大きさ。
太陽が印象的な国旗、太陽は自由、上の青い部分が平和と正義、
左の白は平等と友愛、下の赤い部分が勇気と愛国心を表していて、
戦争のときには赤い色を上にして掲げるという。
私が行ったのは、フィリピンのおへそくらいにあるセブ島と、
その近くのいくつかの小さな島々。
泊まったホテルは窓が極小の細長い部屋で、ちょっとがっかりしたけれど。
数分歩けばすぐ海で、南国色の花もあちこちで咲いていて、
樹々の緑もしっとりと濃い。
現地の人たちもうれしくなるよな天気の良い日に、
少し船で沖に出て、エメラルド色した海にダイビング。
太陽の光の粒をたくさん含んだ澄んだ海の下には、
珊瑚の森に集う鮮やかな色の魚たち。
小さなエイが、海底の砂を音もなく撒い上げて
跳ねるように逃げてった。
海の中はとても静かで、波の音も、魚たちが泳ぐ音も聞こえない。
じぶんの呼吸だけがポコポコ音を立てて、泡になってやがて海面でプチン。
はじけてそして、ゆらめく青空に溶けていくのを見てた。
でもそのうちに、広すぎる海がこわくなって、
この先に見たこともない危険な海洋生物がいたらどうしよう
と思い始めるのが常。
やっぱり私は陸地の生き物だから、
海の世界はちょっと覗くくらいでちょうどいい。
だからダイビングはいつまでたっても初心者コース。
また、ある晴れた日の朝。
ホテルの人に勧められたIsland Hoppingというものに出かけることにした。
船で小さな島々を巡るお散歩の旅。
数人の旅人と、現地の人を乗せた小船が海を走り抜けたその先に、
思っていた以上に長い船旅に、みんなうつらうつらしてきた頃に。
真っ白な砂といくつもの青が美しいグラデーションを魅せるビーチに着いた。
ちょっとしたバーベキューと、甘い甘いマンゴーをほおばって、
ビーチで遊ぶのもそこそこに、島を探検することにした。
白い砂を踏みしめて、島の奥へ。大丈夫?きっと大丈夫。
そうしたら、次々いろんな人に遭遇、
人懐っこい島の人たちとのたくさんの出会いが待っていた。
それはおもしろくって、たのしくって、今も明るい南国での記憶として、
心で光ってる。

Story 3
光の島

Island Hoppingでホッピングした名前も知らない島。
突き抜ける青い空の下、島の奥へと続く道を歩いていくと
向こうから2人の男の子がやってきた。
太陽の日差しが強いから、Tシャツのそんな着方を編み出したのかな。
2人は少し立ち止まって、こっち見て、またすたすた逆方向へ歩いてった。
非日常な光景に、わくわくする。
それから遅れて、数人の若者たちに遭遇。
15才だという彼らは、ちょっと背伸びしようとしてる思春期まっただ中な雰囲気。
赤いカチューシャの男の子がリーダー格。
写真撮ろうよって言うと、ニヤっと笑って応じてくれた。
どこの国でもこういう男の子たちっているみたい。
河原町で見かける男子高校生とかとおんなじ感じ。
まだまだずんずん奥に進んで行くと、次は漁をしている人がいた。
1人で小さな網と、手作りの銛を持って。
何かとれましたか?
タコが取れたよって、見せてくれた。
手のひらにおさまるサイズの小さなタコ。
どうやって捕ったのかな、どうやって食べるのかな。
立ち止まってたら、いつのまにかどんどん島民が集まってきた。
「島の変わり者」らしきおっちゃんに名前を聞かれて伝えたら、
うんうんうなずきながら、復唱してくれた。
興味津々な様子で近寄ってきてくれた女の子たち。
にこにこ笑いながら、英語で「結婚している?」
「彼氏はいる?」って聞いてきた。
恋バナは全世界共通の女の子の関心ごと。
今までもいろんな場所で恋バナに花を咲かせてきた。
言葉なんて通じなくっても盛り上がる。
私が、ここは海と空がとてもきれいねって言うと、
そんなのなんでもないよっていうように
ちらりと海に目をやって、まぁそうかもねって1人の女の子が言った。
あまりに見慣れた風景だったからか、
それとも海や空はきれいなだけじゃないってよく知ってるからこその、
「まぁそうかもね」だったのかは分からないけれど。
少しその反応が意外だったことを覚えてる。
砂浜で遊ぶ子どもたち。
太陽の光をたくさん浴びた、褐色の肌の元気いっぱいな子どもたち。
一緒に座り込んで砂遊び、そして始まった撮影大会。
デジカメで撮った写真を、ほら可愛く撮れたよって見せてあげたら、
すごくすごく喜んでくれて、もっともっと!
どこからか話を聞きつけたのか、私もー!って島の奥の方から走ってくる女の子。
思い思いのポーズして、撮れたよって言うとデジカメの小さな画面に大殺到。
それを見て、次はこうしたほうがいいとかを多分友達同士で話して、
もう一回、はいポーズ。飽きることなく何度も何度も繰り返し。
たくさんの笑い声が島の景色を一段と明るいものにした。
そしてそろそろ船が出る時間、行かなきゃ。
楽しい時間をありがとうと、さよなら告げて来た道を帰り始めると、
みんなにこにこ着いて来た。
特に何を話すでもないけど、ぞろぞろ横に並んで着いて来てくれた。
遠くから名前を呼ぶ声がして一生懸命その声の主を探したら、
「変わり者」のおっちゃんが、大きな声で私の名前を呼びながら両手を大きく振っていた。


Story 4
カラフルシティ

フィリピンは1565年から1898年までスペインの植民地だった。
”フィリピン”という名前も実は、16世紀のスペイン皇太子フェリペに
ちなんだ名前なんだって。
この時代以降でも、1946年の独立までに
アメリカや日本の植民地だったという歴史がある。
私はまだフィリピンの多くを見たわけではないけれど、
島を歩いていると植民地時代の影響が色濃く残っていることに気付く。
たとえばフィリピンの公用語は、フィリピン語と英語。
これはアメリカの影響、町中では英語が通じる。
アジア唯一のカトリック国で、国民の約90%がカトリック信者だというのは、
300年以上も続いていたスペイン統治時代の影響。
立派な大きな教会や、住民たちの憩いの場みたいな教会、
日本でいうところの祠みたいな祈りの場所を、
町の中心でも小さな島でも見かけた。
日曜日には礼拝に通う熱心な信者も多い。
Island Hoppingで訪れた島の小さな教会。
マリア様の像と祭壇、屋根の上には十字架が掲げられている
海風が通り抜ける白い教会。
漁を終えて帰ってきた人や、子ども連れの家族、
若者たちが集まって、その時は特に祈るでもなく穏やかに
それぞれの時間を過ごしてた。
にこにこ笑って、大きな貝を見せてくれて
控えめに、「買う?」って言ってきてくれた。
おどけて麦わら帽子をかぶせてくれたりもした。
教会は人々の暮らしの一部分。
そしてすごいのがクリスマス!
フィリピンのクリスマスは世界一長いらしい。
なんとその長さ、9月から2月まで。
盛大に祝うんだって。
クリスマスは冬がぴったりだと思ってたけど、
トロピカルな国でのクリスマスも楽しそう。
フィリピンは一年中、気温が25度くらいの常夏の国。
最後の日は、海から離れてセブの町をお散歩した。
町を歩いていたら、街路樹にドリアンがなってるのを見つけた。
トラックの荷台で何かのフルーツを食べてる人たちがいて、
近くを通ったら「一緒に食べてく?」ってわけてくれた。
ふらりと入った家族でやってる食堂で食べたごはんは、
思ってた以上においしかった。
たくさん見かけたカラフルな軽トラは目新しくって可愛かったけど、
ケーキの色にはびっくり。何味?
フィリピンのギターは世界中でも有名で、ギターの工房やお店も
たくさんあった。ギターもカラフル。
大型ショッピングセンターで買おうか迷ったほうきとちりとり。
ココナッツでできてるちりとりなんて、使ってる姿を想像するだけで
おもしろいでしょ。
でも結局ほうきとちりとりは、荷物に入らないから諦めて、
代わりに買った絞り染めのワンピース。
残念ながらカラフルさ過剰のため、日本で着る機会がまったくない。
南国のパワーに流されてしまった模様。
新しい色が次々目に飛び込んでくる、カラフルトロピカルシティ!
そしてにこにこ愛想のいい、子どもたち、大人たち。
警備員さんだってフレンドリー。
「きれいな海での夏休み」を目指してやってきたフィリピン。
もちろんその思いは叶ったけれどもそれ以上に、
カラフルに彩られた土地に暮らす明るい笑顔の人たちが、
一番印象に残った旅だった。






